開催日時
2025年9月29日/14:00~16:00(開場13:30)
会 場

東邦ガス(株)プロ厨房オイシスおよびオンライン(Zoom)形式

参加者数
会場参加:42名、オンライン:39名

今回の講演では、令和6年度の学会賞技術賞を受賞された以下の2作品についてご講演頂きました。

【名古屋市国際展示場第1展示館(ポートメッセなごや第1展示館)  の空気調和設備】

講師:金本 薫希 氏((株)竹中工務店)

新第1展示館は、「新しい人と物の波を名古屋に」をコンセプトに、老朽化した既存施設を更新し整備されました 。この施設は、大規模展示に対応する無柱大空間(約20,000㎡)を持ち、災害拠点としての機能や低炭素化が図られています 。公共施設として、海に近い立地特性を考慮し、主要機器(受変電設備、発電機、オイルタンクなど)を浸水対策として2階以上に配置することで、信頼性と事業継続性を確保しています 。また、災害時には帰宅困難者の一時滞在拠点としても機能します 。イベント利用においては、電灯120VA/㎡・動力200VA/㎡という高密度の電源容量を確保し、さらに外部電源車からの給電ルートも用意することで、柔軟性の高い電源・イベント設備計画を実現しています 。空調設備は、ガス吸収式冷温水発生機と空冷ヒートポンプモジュールチラーによる電気・ガスのベストミックスを採用し、外気冷房やCO2制御を導入しています 。特に、大空間の課題であった負荷の偏在に対応するため、日本初となるバーチャルセンサーを用いたデジタルツインによる空調制御システムを開発・導入しました 。このシステムは、サーモカメラや実測データからシミュレーションを実行し、空間内の温度分布(バーチャルセンサー値)に基づいてVAV(可変風量装置)をきめ細かく制御します 。これにより、従来の定風量方式と比較して、快適性を維持しつつ空調消費エネルギーを約30〜70%削減する効果を確認しています 。さらに、シミュレーション処理にAI予測を取り入れることで、制御のリアルタイム性を向上させ、1サイクルを大幅に短縮しました 。これらの施策の結果、本施設はNearly ZEB相当(エネルギー消費量低減率76%)を達成し、CASBEE名古屋ではSランク(BEE値3.7)を達成しています 。

【YANMAR TOKYO/YANMAR’s  FUTURE VISIONの体現】

講師:藤井 拓郎 氏((株)日建設計)

ヤンマーの未来ビジョンを体現する複合ビル「YANMAR TOKYO」は、高効率な設備システムと快適性を追求したオフィスビルです。基幹設備として、ヤンマーの主力製品である高効率CGS(コージェネレーションシステム)を採用しています。このCGSの排熱は、冷暖房利用に加え、自然換気の駆動力を促進する国内初の試みにも活用されています。さらに、太陽光発電(10kW)や風力発電(1kW)も導入し、エネルギーの創出を図っています。オフィス空間では、GHPを用いた放射/対流モード可変型の空気式放射冷暖房システムを導入しています。これにより、冬期の暖房到達距離不足などの欠点を補いつつ、省エネと快適性を両立しています。また、気候の「二季化」に対応するため、13℃~18℃の低温外気でも利用可能な「次世代型多孔式パネルダクト自然換気システム」を開発・導入しています。このシステムは、天井の多孔式パネルダクトから外気を均一かつ低速で室奥まで供給し、ドラフト感なく自然換気を実現しています。さらにCGS排熱を換気用シャフトに投入して重力換気を促進することで、自然換気期間を70%UPさせています。地下のパブリックスペースでは、大規模な緑化を採用し、植物育成に必要な光と色・強さを制御するライティングや香り空調により、光・風・緑が一体となった空間を創出しています 。

会場での参加は42名、オンラインでの参加は39名と多くの方にご参加いただきありがとうございました。また、講師を担当されました竹中工務店 金本さま、日建設計 藤井さまにおかれましては、ご多用の折、大変貴重なご講演いただきましたことを厚く御礼申し上げます。