開催日時
2024年1月24日(水)/14:30~16:45
会 場

名駅セミナーオフィス ルームD および オンライン(ZOOM)

参加者数
25名

 今年度の講演会は、最適化研究会定例会のテーマの中から関心の高かった空調技術開発事例と、海外での電力需要応答・仮想発電所についてご講演頂きました。

「中部電力における空調研究開発の最新事例紹介」

講師:中山 浩(中部電力)

 中部電力の空調研究開発事例についてご講演いただきました。
 開発した液式調湿空調機は高効率ヒートポンプを熱源とした、ボイラレスで省エネルギーな空調機です。調湿剤にイオン液体を用いることで、従来の調湿剤である塩化リチウムと比較して、金属溶解度は1/500に、黒カビ菌に対する除菌性能も向上しました。気液接触器と熱交換器を層状に配置し、一体化することで調湿剤の温度上昇を抑制し、空調機のコンパクト化と低コスト化を実現しました。病院をモデルに導入効果を試算した結果、一般的な冷凍機とガスボイラを組み合わせたシステムと比較して、年間エネルギー消費量は71%、年間エネルギーコストは51%削減できる見込みです。
 「工場向けゾーン空調」は、エアカーテンで仮想の壁を作る空調システムです。エアカーテンの内外温度差が最も大きくなる条件を探索した結果、空調吹出角度15°、エアカーテン吹出角度15°、エアカーテン風速5m/sの時に温度差7℃となりました。
 「VPP・DR」の取組は、AWSを利用したサーバーでリソースの監視・制御を実施しています。空調設備に蓄電池を組み合わせると目標値に近い制御が可能となることを確認しました。

「熱機器を用いたデマンドレスポンス・VPPの事例と分析」

講師:山田 智之(電力中央研究所)

 海外のDRやVPPの事例についてご講演いただきました。
 再エネ主力電源化に向けて変動性再エネ導入量を増やすにつれ、系統安定化対策技術は徐々に変わります。電力系統運用の6段階のフェーズのうち、日本はフェーズ2,3に該当します。フェーズ3からは電力系統柔軟性の要求が高まり、フェーズ5,6では再エネ発電余剰を用いた需要の電化や燃料製造が有効となります。例えば、ガス使用機器の電化や産業用途の水素製造等です。
 系統柔軟性確保に向けて、日本でも需給調整市場が設立されましたが、需要側機器を調整力として活用するためには、それをビジネスとして成立させることが重要です。
 海外の先行事例として、熱を利用したVPP事例調査とVPPビジネスの事業性確保の事例分析を行いました。

  • 冷凍倉庫会社の事例では、冷凍庫稼働状況を監視し、DR応答可否・容量をアグリゲータにリアルタイムで送信しているとのことです。
  • 空調システムのDR事例では、空調機器はアグリゲータの前日計画指令に完全に従うことが出来なかったため、条件を交渉し運用スケジュールを決定したとのことでした。
  • 電気温水器のVPP事例によると、VPP事業性を確保するためには、建物開発段階から関与しての効率的なリソース拡充と、1台のゲートウェイから多台数機器を制御するといった計測・通信・制御コストの低減が必要とのことです。

 日本でVPP事業を成立させるには、リソース拡充の労力を抑えるため、機器設計時からVPP対応とすることや、大型不動産・宅地開発など建物の設計段階といったVPPリソースを密集させる機会を逃さないこと、VPPシステムの構築から運用までワンストップサービスの提供などが求められます。

文責:成瀬